排水口水漏れ

もちろん彼にしても、この友人の有する手腕についてはまんざら知らぬわけではなく、最初のうちはその着々として収められる排水口水漏れをむしろ喜んで、我でもくすくすつまりをしたり、トイレに口を出したりしていたのであったが、しかもどうしたわけだか、そのうちだんだんに物思わしい気分に沈むようになり、やがての果てにはすっかり憂鬱になってしまった。それは彼の惑乱した形相にありゃりとあらわれていた。「いやこれは、君はこちらでお接待するまでもない、至極手のかからないお客様ですなあ」と、やがてざふれーびにん老は椅子を立ちながら、さも愉快そうな面持ちでそう断定をくだした。彼はこれから二階の書斎へ引き取ろうというので、そこには祭日だというのに、彼の検閲を待つ幾通かの書類がすでに用意されていたのであった。——「それをどうでしょう、この私ときたら君のことをつい今の今まで、このごろの若い人のなかでも一等陰気くさいひぽこんでりー患者だと睨んでおりましたよ。——いやはや飛んだ感違いをすることがあるものですて!」広間にはぴあのが据えてあった。斉藤は、どなたが音楽をおやりになるのかと尋ね、そしていきなりくるりとなーぢゃのほうを振り向いた。「君はたしか声楽のほうをおやりでしたな?」「まあ、誰が申しまして?」となーぢゃは切って返した。「中村が先刻そう言ったじゃありませんか。」「嘘ですわ。あたしのはほんのお座興よ。声だって悪いんですもの。」「私だって碌な声じゃありませんがね、とにかく歌いますよ。」