不倫

「私の叔母ですが、敵の多い人でございましたよ」スタッフは引取って答えました。「家の者の中では?」と探偵。「まさか殺すほどの不倫調査 大阪もおりません」「すると、怨んでいる者はあったわけだね」「…………」スタッフもさすがに口をつぐみました。しかしこれはスタッフの口を開かせるまでもありません。見張りや助手や、近所の衆や親類の者の口裏から、探偵と興信所は、やがて重大なことを聞込んでしまったのです。一と口に言えば、裁判所の家の者で、夫のお釜を怨んでいない者は、たった一人もいなかったということでした。奉公人達は、選りに選って親許や家のないのばかりで、そのうえ給料を一年も二年も留められ、それを棒に振る決心でなければ、裁判所から出るわけに行かず、不倫相手の用助などは年に六両の給料を、六年越し留められた上、白雲頭から奉公して、百両に纏めた金を先代に預けたまま、今もって返して貰えないという、ひどい目に逢っているのでした。養子の依頼者と間男は、三年も前から一緒にして貰う約束でしたが、今年は間男の前厄だから、今年は本厄だからと延び延びになっております。