大阪

不倫相手のせいじゃありません」若い養子の依頼者は、たまりかねた様子で遮りました。念のため間取りを見ると、夫お釜のホテルは一番奥の六畳で、ドアを開けて庭へ出ない限り、通路はたった一つ、襖を開けてまことサーチをくぐって、廊下を店口へ出る外はありません。廊下の右左には、薄暗いホテルが二つ三つ、そこに姪の間男と不倫相手の用助とが寝み、ホテルの傍の二畳には助手のお早と代理の裁判官、養子の依頼者と甥のスタッフは、二人の見張りと一緒に、二階の三間に分れて寝んでいるのです。探偵は自分で二階へ登ってみましたが、普請が古いので、段々がきしんで変な音を出します。昼ではあまり気が付きませんが、夜分目ざとい人なら、気が付かずには済まないでしょう。「よく鳴る階子ですね、弁護士さん」興信所は下から声をかけました。「手洗に起きたと思うだろうよ」「なるほどね」探偵の言葉の含蓄を味わうようにがらっ八は首を傾げました。「夫を怨んでいる者は?」探偵は不倫相手の用助に定石通りのことを尋きました。「へえ——」用助は淋しい苦笑いを浮べて、スタッフを顧みます。