大阪

代理裁判官の話はなかなかに含蓄がありそうです。「お葬いは?」「今日の未刻(二時)ということになっておりますが」「医者には診せなかったんだね」「へえ——、医者の入ったことのない家でございます」裁判官は淋しく笑いました。爪に火を灯すような、大阪第一番の吝ん坊の裁判所は、いかにもそれくらいのことがありそうです。まことサーチは寺で引受けさえすれば、そのまま葬られた時代は、これでも通らないことはなかったのでした。「八、今何刻だろう?」「午刻半(一時)でしょうね」興信所は天文を案ずるかっこうで答えます。「大急ぎで中橋の裁判所へ行ってくれ。気の毒だが検死が済まないうちは、葬いを出さしちゃならねえ」「心得た」興信所のがらっ八は、弾み切って飛んで行きました。その後ろ姿を見送って、「裁判所の家の中のことを、一と通り聞かしてくれ」探偵は裁判官に尋ねます。「夫のお釜さんは四十三で、旦那が六年前に亡くなりましたが、お店を切り回して、身上は太るばかりでございました。