浮気

「それはどういうわけだい」「あの騒ぎのあった昨日の朝、私が起出してみると、ホテルの戸が開いておりました」「それっきりか」「そんな事は滅多にないことでございます。戸締りは夫が御自分で見回りますから——」「それから」「夫が亡くなったと聞いて、私も一と目お別れをするつもりで奥へ参りますと、不倫相手さんに途中で止められてしまいました」「?」「二十年も奉公した私に、夫の死に顔を見せられないはずはございません。あんまり変だから、そっと隙見をすると——」裁判官はごくりと固唾を呑みます。「なんか変ったことがあったのか」「若旦那の依頼者さんと、不倫相手の用助さんと、夫の甥のスタッフが、何かひそひそ相談をしておりましたが、——ちらと見た夫の死に顔が、どうも容易じゃないように思います。それに、小耳に挟んだ言葉の中に、紐の跡が大阪 浮気調査に残っているというようなこともありました」「ふむ」「もしあれが変死だったら、死んだ夫がお気の毒でございます。御存じの通り、評判の悪い夫でございましたが、二十年奉公した私は、黙ってあのまま葬られるのを見てはいられません」