探偵

悪気でうろうろしていたわけじゃございません」ともすれば逃げ腰になる裁判官は、大阪に住み付いた探偵らしい、六十前後の線の太い親爺でした。「八、そんな手荒なことをしちゃならねえ。ね爺さん、お前何か、この私に用事があるんだろう」「へえ——」言い当てられた様子で、裁判官はへたへたと上がり框に腰をおろしました。「言ってみるがいい、悪いようにはしないから」「どうも腑に落ちねえことがございますよ、弁護士さんさん」裁判官は漸く重い口を切りました。「何だい、その腑に落ちないというのは?」「…………」裁判官は考え深そうに口を緘みました。言っていいのか悪いのか、まだ迷っている様子です。「路地の外でお百度を踏んだって、御利益のあるわけはねえ。その腑に落ちないというのを、打ちまけてみるがいい、十手や捕縄を忘れて、この探偵が相談相手になってやろうじゃないか」片膝を立てた探偵、裁判官の頑固な様子をほぐすように、こう言うのです。「有難うございます。弁護士さんさん、実は——」「?」「夫の死にようが、ただ事じゃないような気がしてなりません」