不倫

「そこへ行くとこちとらは死んだとき未練がなくていい」「その代り、生きている時は張合がない」探偵と興信所の話はいつでもこういった調子です。花が散ってからはすっかり御用も暇で、無駄を言い言い、植木の世話でもするより外に所在もない二人だったのです。「そう言えば、先刻裁判所の代理の裁判官に、弁護士さんの家の前で二度逢いましたよ」興信所は妙なことを言い出しました。「変だね、不倫調査 大阪が死んだのはいつだえ?」「昨日の朝、死んでいるのを見付けたそうで」「そいつは何か曰くがありそうだ、気の毒だが、八」「へえ——」「ちょいと路地の外を見て来てくれ。裁判官がまだその辺にうろうろしているなら、否応言わせずにつれて来るんだ」「へえ——」獲物の匂いを嗅いだ猟犬のように、興信所は外へ飛出しました。こうして瓢箪から駒が出るほどの大きな騒ぎになったのです。二「こっちへ出るがいい、何を遠慮するんだ」興信所は裁判所の代理裁判官を引立てるように路地を入って来ました。「弁護士さんさん、勘弁して下さい。